IoTを活用して事業を効率化・高収益化・人材不足を解消してみませんか 第3回

今回は、これからIoTを活用していこうと考えている皆様が、どのような観点で知財を意識すればよいのかのヒントになる事例として、(社)北海道発明協会様の月刊誌「発明北海道 11月号(11月10日発行)」に寄稿させていただいた事例をご紹介します。

◆特許を活用すれば大企業とも伍して勝負できる!?

 特許の取得にはお金がかかるし、効果もよくわからないから、消極的にならざるを得ないという声をよく耳にします。そこで、今回は、特許を効果的に取得した中小企業が、大企業と真っ向勝負をしてビジネスを成功させた事例をご紹介します。

「ペット用のIoTトイレ」のケース

 コトは2015年12月18日にシャープが「ペット用のIoTトイレ」の特許出願を行い、そのわずか1週間後の12月25日にユニ・チャームが同様の特許出願を行ったことに端を発しています。まさに運命のいたずらとしか言えないような偶然ですが、両社の特許はほぼ同じような内容でした。

図1.ペット用IoT トイレの構成図 (ベースの図は特許6560468の図2より引用)
その後・・・

 ユニ・チャームの特許が一旦は成立しましたが、シャープがその特許に対して異議申立を行うなど、両者の間で潰し合いが始まります。いずれの特許も、重量センサを下容器に設けることにより、上容器のスリットを通り抜けて「下容器に落ちた尿の重さを直接的に測定」するアイデアでした。最終的にユニ・チャームの特許は訂正され、極めて狭い権利になってしまいました。

中小企業の戦略

 そんな中、両社の争いをじっくりと見ていた企業があります。それが(株)ハチたまという社員わずか11人の会社です。彼らは、2社の先行特許を研究して「下容器にはセンサを設けず、上容器の重量変化で尿の量を測定する」という回避策を見出して、①構造面とセンサの配置のIoT特許、②多頭飼いのための個体識別のAI特許、③獣医師と連携して尿の量や頻度や体重変化の関係から腎不全などの予兆を知らせる病状推定のビジネスモデル特許など、2018年前後に数件の特許出願を行いました。

図2.ペット用IoT トイレのパテントマップ(出願人別・年度別)

ハチたま社は、大企業の特許を回避した上で、新たな価値を生み出す技術を開発して特許化した結果、知財を活用した資金調達で4億円以上の成果を上げると共に、売上げや収益、顧客満足度等、ビジネス面でも成功を収めました。


このような成功を収めた背景として、

①ねこの利用頭数で2,000頭、健康データとして100万件を超えるデータを集め、

②そのデータを活用するためにデータサイエンティストやIT技術者を養成して、IoTやAIの開発に備えると共に、

③特許を通じて他社技術を把握したうえで、開発した技術を順次特許化するという知財戦略を採ったこと、

などが挙げられます。

株式会社ハチたまの会社情報

会社名株式会社ハチたま
所在地神奈川県藤沢市片瀬海岸
創業2015年3月
資本金1億2,752万円
従業員数11名
事業内容ペット関連サービス
企業理念ねこが幸せになれば、人はもっと 幸せになれる。
製品特徴「スマートねこトイレtoletta」は、ねこがトイレに入るだけで、自動でねこの健康データを取得し、スマートフォン上のアプリに通知するヘルスケアサービス
研究内容の特徴社内にはIT技術者やデータサイエンティストが在籍し、ねこ専門の獣医師と共同研究を行っている。 
データ取得件数ねこの利用頭数は2,000頭、健康データの件数は100万件
特許による資金調達4億円以上
会社ホームページhttps://toletta.jp/