店舗デザインや営業スタイルは保護できるか(第1回)著作権法/商標法/不正競争防止法による保護

著作権法による保護(建築の著作物)、商標法による方法(立体商標)、不正競争防止法による保護(不競法2条1項1号・2号)に加え、来年4月に施行される意匠法の活用を考えてみたいと思います。

第1回目は、著作権法、商標法、不競法による保護を中心にご説明し、意匠法改正は第2回目でご説明します。

どのような法律で保護できるのか

「ライバル会社に店舗のデザインや内装、営業スタイルなど等を模倣されて困っている。何とかならないか。」というご相談がよく寄せられますが、どのような方法が考えられるでしょうか。まず、著作権法による保護(建築の著作物)、商標法による方法(立体商標)、不競法による保護(不競法2条1項1号・2号)が考えられます。

1.著作権法による保護(建築の著作物)

 著作権法では建物も保護対象になっていますが(著作権法10条1項5号)、著作権法による建物の保護は、美術性を有することが求められるので、かなり敷居が高くなります。また、著作権の侵害といえるためには、権利者側で元の著作物に依拠していることを主張立証することが必要となるため、この点でもかなり敷居が高いといえます。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

(中略)

(著作物の定義)

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

(中略)

五 建築の著作物

(後略)

著作権法

2.商標法による保護(立体商標)

 建物については、商標法の立体商標による保護も考えられますが、立体商標として登録を受けるためには、⾃他商品等識別⼒があること、及び、不可⽋形状でないことが求められます。自他商品等識別力は、商標法3条1項各号に定められ、立体商標の場合は「商品等の形状そのもの範囲を出ないと認識されるにすぎない」として識別力を有しないと判断されることがほとんどで、長期間の使用によって、あの会社のトレードマークだと世の中に認識してもらえるようになった場合など(商標法3条2項)、かなり限定的な場合にしか保護されません。

<立体商標の出願例>
 下記のように、往年のカーネルサンダース人形やペコちゃん人形はともかく、立体商標として登録を受けるためにはかなり苦労を伴うことが分かります。

立体商標の出願例立体商標経過登録可否
カーネルサンダース⼈形出願後、拒絶理由通知なしで登録
第4153602号
不二家ペコちゃん⼈形出願後、拒絶理由通知なしで登録
第 4157614 号
キッコーマン醬油のビン(形状のみ)特許庁の審査では拒絶理由通知が発行され、その後意見書を提出して登録査定
第6031041号
ヤクルトの容器(形状のみ)特許庁の審査および審判では拒絶され、知財高裁で登録を認められた
第5384525号
きのこの山(菓子の外観)特許庁の審査では拒絶理由通知が発行され、その後アンケート結果を提出して、3条2項による識別力を認めるのに十分な周知性が認められて登録査定
第6031305号
マリオキャップ特許庁の審査では拒絶理由通知が発行され、その後意見書を提出して登録査定
第5929954号
ひよこ(菓子の外観)出願後、拒絶理由通知を経て拒絶査定の後、査定不服審判を経て登録が認められていたが、侵害訴訟の相手方から無効審判請求があり、登録を有効とする審決が出たが、審決取り消し訴訟で無効が確定(知財高裁、最高裁)
無効理由は3条1項各号の自他商品等識別力で、世の中にヒヨコの形をした菓子が散見されていたことから、自他商品等識別力を認めなかった
×
第4704439号

不正競争防止法2条1項1号・2号による保護

店舗の外観や内装は工夫次第では、商品等表示と認められ、不正競争防止法で保護される可能性はあります。

(定義)

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

不正競争防止法

しかし、周知性や著名性の要件を満たしているかどうかが厳しく判断されるため、今のところ、コメダ珈琲の店舗外観を模倣した事例など、一部の例外を除き、かなり厳しい状況です。

なお、営業スタイルやビジネスのやり方について、不正競争防止法2条1項の商品等表示に該当するかを争った事例としては下記のマリオカート事件があります。

 東京地裁の判断では、周知性と混同行為を認定して、不正競争防止法2条1項1号(周知商品等表示と混同させる行為)に該当すると判断するにとどまりました。

他方、知財高裁では、「マリオカート」及び「MARIOKART」の著名性を認定して、同2号(著名商品等表示の冒用)を適用しました。
 
 このように、「マリオカート」のように誰でも知っている商品名称は不正競争防止法2条1項1号・2号による保護を受けられる範囲が広がりますが、一般的には不競法の適用は難しい面があります。

まとめ

以上のように、著作権法による保護(高度な美術性)、商標法による保護(3条2項による識別力を認めるに足りる周知性)、不正競争防止法による保護(不競法2条1項1号・2号による商品等表示該当性)はいずれも、かなり敷居が高いことが分かります。