企業における知財戦略(第1回) プロローグ

みなさま、こんにちは。弁理士の常本です。

発明協会の月間機関紙「発明 北海道」に連載した記事を4回に分けてお届けします。

近年の潮流

多くの企業では、ここ数年で知財に対する取り組みは大きく変わりました。大手の場合ですと知財部門のさらなる拡充が進んでいますし、これまで知財部門を持たない中堅企業でも、部門を創設する(あるいは専任者を置く)動きが加速しています。その理由としましては、知財重視の国家戦略の存在はもちろん、「知財戦略の充実している企業」と「事業で成功した企業」の相関関係が高いことが判ってきたことや、法令遵守の動きが加速しつつあることも一因となっています。

その結果、中堅企業でも特許を積極的に活用して事業の保護を図ったり、大手企業との契約を有利に進めている企業も増えてきました。

図1.独自技術が特許で守られるまで

 

 他方、知財に対する取り組みが未だ十分でない企業が多いことも事実です。特に、道内では、IT、バイオ、食品、機械(農機具、産業機械)、土木技術など独自の技術を持つ中堅企業が多く、特許を有効に活用していく必要に迫られている一方で、専任の担当者をつけられる余裕がなく、足踏みしているのが実状です。専任者どころか出願費用を捻出するのにも苦慮しているところが多いのです。

しかし、このまま放置すると、その差は開いていく一方です。自社の技術を特許などで保護することが大企業に唯一対抗できる手段であるところ、早急に手を打つ必要があるのです。特に特許などの産業財産権の場合、すぐには効果が出ない一方で(図1、図2参照)、悪影響もすぐには発生しません。そういう意味で、今は大丈夫と考えていても、何年か経った後で、ボディーブローのように効いてくるので要注意です。

図2.特許出願してから効力発生まで

有効な知財戦略とは

では、知財戦略を推進するには、どのような手段を講じるのが効果的でしょうか。
まず、外部の専門家に丸投げするのも手です。しかし、企業側で知財の知識が殆どない場合、製品や技術に対する思い入れが優先する結果、依頼する内容自体が核心を得ていない場合も多く、必ずしも意図した知財戦略にならない場合が多いものです。

他方、社内に知財担当者がいる場合、他社の技術との相違点、その技術の市場での優位性、これまでの自社の成功経験、および将来の事業の方向性等を総合的に鑑みた上で、必要な要素技術の保護を着実に進めていくことが可能となります。

確かに現状では、多くの中堅企業では知財担当はおろか法務担当さえいない場合も少なくありません。「うちでは社内に知財に詳しい人がいないので、何から手をつけていいのかも解らない」という声も聞こえてきそうです。

しかし、あきらめるのは早計で、いくつかの手段は講じられるはずです。大事なのは「知財人材育成を行う」という意思決定をすることと、「最低限の知財人材育成の目標レベルの設定」と「その目標レベルが意外と近いところにある」ということにお気づきになることです。一定のレベルの担当者がいれば、あとは、うまく外部の専門家を活用して、知財戦略を推進することができるのです。次号では、この重要な役割を担う知財担当者育成の肝についてご説明したいと思います。乞うご期待。

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