R&D支援センター様の技術者・研究開発者向けセミナー「知財DX時代の特許調査効率化とAI技術の特許取得 ~AI×知財戦略の最前線~」のセミナーのご紹介
こんにちは。北海道札幌の弁理士の常本です。
今回は、(株)R&D支援センター様の「技術者・研究開発者向けセミナー」の講師を拝命することになりましたので、ご案内いたします。
◆セミナー概要
セミナーは第1部と第2部の2部構成となっており、当職は第1部を担当します。
知財DX時代の特許調査効率化とAI技術の特許取得 ~AI×知財戦略の最前線~ 【LIVE配信】 開催日時:2025年06月30日(月) 10:30~16:00 主催 : (株)R&D支援センター 【第1部】 10:30~12:00 「知財AIの「クセ」を攻略!特許調査を最適化する「定率法」」 エデュテックソリューションズ 代表 山本 隆治 氏 |
セミナーの詳細はコチラ↓をご参照ください。
<(株)R&D支援センター様のセミナー告知ページ>
https://www.rdsc.co.jp/seminar/250652
受講金額についても上記のURLにてご案内していますので、併せてご参照願います。
通常1名様申込で55,000円(税込)のところ、 (株)R&D支援センター様への会員登録で割引になるとのことです。
受講金額
★1名で申込の場合、49,500円(税込)へ割引
★2名同時申込で両名とも会員登録をしていただいた場合、計55,000円(2人目無料)
なお、「講師からの紹介割引」が設定されており、上記の会員登録割引からさらに約2割の割引となります。
⇒すでに当事務所のクライアントになっているお客様、及び開催日までに当事務所に出願や調査をご依頼いただいた場合には、紹介割引を利用可能ですので、受講される場合は知財戦略パートナーの窓口(ip“AT”nagatomo-international.jp)までご一報ください。紹介割引用の申し込み用紙をお渡しします。
(※メール送信の際はアドレスの“AT” を@に置き換えてください)
当職が担当する第1部の趣旨、及びプログラムは下記のとおりです。
<第1部の趣旨>
AI、IoT技術を特許で保護する取り組みは日本においてもかなり進んでいますが、まだまだ十分ではないのが実情です。AI、IoT技術を保護するためには、従来のIT特許とは異なる観点でクレームを考える必要があります。従来のIT特許では、最終的な判断結果を得るまでの「装置」「方法」「プログラム」などをクレーミングするのが主流でしたが、AI特有の処理を保護するには不十分です。AI、IoTの開発に際しては、学習データの生成処理、学習処理などのAI、IoT特有の技術要素があり、これらをどのように特許に結び付けていくかが重要になります。そこで、本セミナーでは、「特許調査のタスクをAI化したシステム」の特許出願などを題材として、AI、IoT関連発明特有の保護を図るための特許戦略について解説いたします。
セミナーの構成としましては、前半が「AI、IoT関連の研究開発の成果を知的財産として保護するための基礎知識」、後半が「特許調査のタスクをAI化したシステムの特許出願を題材とした有利な特許取得の進め方」という構成になります。
後半では、(1)タスクの特徴をどのようにとらえてシステム化・AI化するか(特徴表現エンジニアリング)という観点、(2)AI、IoT関連技術のどの部分を特許として保護するかという観点、そして、(3)AI、IoT関連発明を保護するための特許出願のクレームの考え方、を学ぶことができます。
本セミナーでは、基本的な考え方から、実例をもとに解説いたしますので、AI、IoT関連の貴社の今後の知財戦略をブラッシュアップしていくことに役立つことでしょう。
<第1部のプログラム>
Ⅰ.AI、IoT関連の研究開発の成果を知的財産として保護するための知識 1.特許の活用 1-1.特許取得の効果(特に参入障壁、協業促進について) 1-2.企業が考える知財戦略 2.AI、IoT特許 2-1.AI、IoT関連技術の特許出願状況 2-2.IoT関連技術とAIの関係 3.AI、IoT技術の研究立案・初期段階で知財を意識した計画立案が必要な理由 3-1.AI、IoT技術の特徴 3-2.どの部分をどのような法律で保護できるかの大局的な視点 4.データを保有する事業者やIT企業などの協力事業者との関係 4-1.開発の進め方や役割分担によって保護できる範囲が変わる? 4-2.データサイエンティストとAI技術者の役割 Ⅱ.特許調査のタスクをAI化したシステムの特許出願を題材とした有利な特許取得の進め方 1.特許調査タスクのAIシステム化の例 1-1.従来技術と改善例 1-2.今回の検討対象の特許の概要 1-3.着想の経緯 1-4.システム化の方向性(特徴表現エンジニアリング) 1-5.システム化の方向性(ニューラルネットワーク内部構造) 1-6.ニューラルネット内の処理 1-7.その他(必要な学習データ量、畳込み計算量の見積もり) 2.AI関連発明の有利な特許取得の進め方(概論) 2-1.AI、IoT関連システムの特許による保護の課題(仮想事例の設定) 2-2.AI、IoT関連システムの特許による保護の課題(仮想事例における解決策) 2-3.各社の学習済みモデルの特許取得状況 3.AI関連発明の有利な特許取得の進め方(具体例) (特許調査のタスクをAI化したシステムの特許出願を題材とした具体例) 3-1.クレーム構成 3-2.特徴表現エンジニアリング部分のクレーム 3-3.学習フェーズのクレーム 3-4.学習済みモデルのクレーム 3-5.推論フェーズのクレーム 3-6.その他 3-7.小括 |
◆セミナーの趣旨について補足
2017年頃からAI関連発明の特許出願が急増し、現在では毎年1万件を超えるAI関連発明が特許出願されています(2016年は1,948件、2017年は3,242件)。

(2024年10月特許庁 審査第四部審査調査室「AI関連発明の出願状況調査 報告書」より抜粋)
このような状況のもと、特許庁は、2016年9月及び2017年3月に「IoT関連技術の審査事例」、2019年1月と2024年3月に「AI関連技術の審査事例」を公開しています。
審査事例によれば、進歩性の判断、発明該当性や実施可能要件を充足させるための明細書の記載等についての理解は深まりますが、AI関連発明の侵害抑止のためどのような特許戦略を採用すればよいのかは判然としません。
このため、「A手段とB手段と・・・を備えた〇〇装置」といった装置クレームなどIT関連発明の延長上で特許を出願しているケースも多く、AI関連発明の保護が十分に図られているとはいえない実情もあります。
(詳細は弊所ブログ「AI関連発明の有利な特許取得の進め方」をご参照)
AIの開発に際しては、学習データの生成処理、学習処理などのAI特有の技術要素があり、これらをどのように特許に結び付けていくかが重要になります。
そこで、本セミナーにおいては、AI、IoT関連発明特有の保護を図るための特許戦略について、特許調査のタスクをAIで行う技術の特許出願などを題材として解説いたします。
◆セミナーのトピックス
本セミナーのプログラムは前掲のとおりですが、セミナーで取り上げる予定のトピックスをいくつかご紹介いたします。
(1)どこを特許として保護すればよいかの基本的考え方
まず、これまでのブログでもご紹介した内容ですが、AI・IoT関連技術の開発現場では、図2のように、立場によって守りたい利益が対立する関係にあります。

このような利益状況の中で、どこを特許として保護すればよいかを考えてみると下記のようになります。

(2)題材とした「特許調査を効率化するAIシステム」
本セミナーでは、このような概論をベースに「特許調査を効率化するAIシステムの特許」を題材にして、どのようなAI特許戦略で進めるとよいのかを検討してみたいと考えています。
また、AI関連発明を適切に保護するためには、「どのようなクレームを作成するのが良いのか」というクレーム戦略についても、実際の特許を題材にして検討する予定です。
なお、題材とする特許は、弊所ブログの下記ページでご紹介した特許です。
当事務所で特許出願した「特許調査を飛躍的に効率化するAI特許」のご紹介(Part1)
当事務所で特許出願した「特許調査を飛躍的に効率化するAI特許」のご紹介(Part2)
題材とするAIシステムについては、 図3に即して考えて、データを保有する事業者Aが抱える課題を「人手で特許調査を行うタスクのAIシステム化」というケースを想定してみました。
そこで、「特許調査を効率化するAIシステム」の着想段階から説明することにします。
なお、事業者Aが保有するデータは、「所定の検索条件でヒットした数百件レベルの公報について、各公報がどの程度関連性があるかを人手で確認した調査結果のデータ」のセットです。より具体的には、数百件の検索条件について、それぞれ数百件の公報の確認結果となりますので、掛け算すると10万件以上の特許調査結果のデータセット(検索条件と公報との関連度合を示す教師データ)になります。
特許調査では、所定の検索条件を策定し、ヒットした数百件~数千件の公報を確認することが多い状況ですが、すべて人手で確認するのは大変です(図4)。

そこで、キーワード群と関連性の高い公報をAIで評価して、関連性が高い順にソートすることができれば、例えば、上位20%だけを確認すればよいことになり、大幅に効率化することができます(図5)。

次に、このような「人が行っているタスク」をどのようにして情報処理システムに乗せていくのかという点が問題となります。
そこで参考にしたのが、「将棋などのタスクを情報処理システム化」している事例です。
例えば、事例を簡略化して詰将棋というものを考えてみます。
詰将棋は、一般的には、(1)次にこの駒をこう動かして、(2)次に相手がこう動いて、(3)その次に自分がこの駒をこう動かして、・・・ という論理的な思考であると考えられています。

しかし、藤井聡太氏(七冠)が詰め将棋を解く際、「頭の中では、一手一手の手順をトレースせず」に、「もっと抽象化されたイメージのようなものを描いて判断している」といわれています(杉本昌隆著『悔しがる力』ご参照)(図7)。

特許調査においても、似たようなところがあり、ヒットした文献の文章を一字一句確認するということも行いますが、ベテランになると複数のキーワードで検索してヒットしたキーワードの位置関係をイメージ的に把握して「こういうパターンなら関連性が高い」というパターン処理のような側面もあります。
実際、「アルファ碁」という囲碁のAIソフトも、「ある局面の盤面を評価して、次に打つ手を決定するという課題に対応して、次に打つ手の候補の盤面データ」を用意し、様々な盤面データのパターンを学習させることでAIシステム化しており、ある種のイメージ処理に置き換えることで強い囲碁ソフトを開発することに成功しています(図8)。

そこで、本件のAI特許調査システムにおいても、複数のキーワードの位置関係の特徴を把握できるような入力データを生成(ベクトル化)することで、人が行う特許調査のタスクをAI化することを目標にしました。

このような入力データ(ベクトル化したもの)を用意して、あとは畳み込みフィルタを用意して畳み込み処理によって、ヒットしたキーワード相互間の位置関係について、近傍の位置関係、ある程度離れた場所における位置関係のパターンによって、特徴マップを順次生成することにより、キーワード群とヒットした文献の関連性を判定できるようになります。
入力層に近いところでは、近傍の位置関係の特徴マップ、中間層ではある程度離れた位置関係の特徴マップが生成されるという具合です(図10)。

(3)「特許調査を効率化するAIシステム」を題材とした特許出願戦略
では、このようにして開発したAI特許調査システムを「どのように特許として保護」すればよいのでしょうか。
前掲の本セミナーの「第1部の趣旨」の下線部にも記載しました通り、従来のIT特許では、最終的な判断結果を得るまでの「装置」「方法」「プログラム」などをクレーミングするのが主流でしたが、AI特有の処理を保護するには不十分です。AI、IoTの開発に際しては、学習データの生成処理、学習処理などのAI、IoT特有の技術要素があり、これらをどのように特許に結び付けていくかが重要になります。
この特許出願戦略を見える化したのが図3ですので、再掲いたします。

図3の観点で、どのようなクレームを立てるべきか検討したのが下記の図11になります(クレーム戦略)。

実際の請求項1は以下のようになっており、「複数のキーワードのヒット箇所を、キーワードの段ごとにベクトル化した部分だけ」で構成されています。
このため、「機械学習モデルに入力するデータの特徴」だけで特許を取得できていることになり、前述のように「人が行っている特許調査のタスクについて、特徴表現エンジニアリングの部分」についてクレーミングしたことを意味します。

本セミナーでは、各請求項について「どのようなクレーム戦略に基づいて策定したのか」についてご説明する予定ですが、大枠としては下記の図13のようになります。
(「図3.どこを特許にすれば有利になるか」の枠組みにあてはめて図示してみました)

以上のような特許出願戦略、クレーム戦略をとることで、データ収集から始まって、データの特徴に基づいて特徴をよく表現できる入力ベクトルを作成し、機械学習によって学習済みモデルを生成し、学習済みモデルを用いて判定処理を行うまでのAI・IoT関連のシステム特有の保護を図ることが可能となります。
◆最後に
本セミナーでは、AI・IoT関連について知財戦略の企画立案の考え方から、人が行っている特許調査のタスクを効率化するAIシステムを題材として、AI・IoT関連発明の特許出願戦略とクレーム戦略についてご説明いたします。
ご興味がございましたら下記のセミナー告知ページをご参照いただけますと幸いです。
<(株)R&D支援センター様のセミナー告知ページ>