特許出願件数及び各種の指標から見た日本の国際競争力の現状と対策案 ~はじめに~

本連載記事について

 昨今、日本の国際競争力の低下が指摘されています。

 例えば、世界の企業の時価総額ランキングで、30年前には、日本企業が世界の上位25社の殆どを独占していたにも関わらず、10年前にはトヨタ自動車1社を残すのみとなり、2018年には上位25社に日本企業は1社も残っていないという状況となっています。

 また、IMD競争力ランキングでは、日本は1990年前後に1位と評価され、1996年まで5位以内を維持するなど高い評価を得ていましたが、1997年に17位にまで急落して、その後も順位は下がり、2020年は過去最低の34位まで落ち込んでいます。

 いまだにFAXを使う文化があるなど、IT分野での遅れも目立つ結果となっています。

IMD競争力ランキング 2015~2019年の日本の評価スコア(60カ国中)
図2  IMD競争力ランキング 2015~2019年の日本の評価スコア(60カ国中
(出典:内閣府「WEF国際競争力ランキングにおける日本の国際競争力」IMD「2019年度はシンガポールが1位」

 あるいは、世界経済フォーラム(WEF)の各国の国際競争力ランキングを示したレポート「Global Competitiveness Report 2018~2020(世界競争力レポート)」によれば、日本は、総合で5~9位前後にランキングされています。

 IMD競争力ランキングよりは上位に位置付けられていますが、トップ10にぎりぎりのときもあり、カテゴリ別ではかなり厳しい指標も見受けられます。

 これらのランキングは欧米の研究所や大学によるものなので、日本に対する正当な評価ではないと揶揄する意見がある一方で、全部の指標ではないもののいくつかの指標では納得できる部分があるとする意見も少なくありません。
 
 しかし、強みだけでなく弱い部分を含む現状を認識し、改善していかなければ未来を切り開くことはできませんので、今回は、知財関係の指標を概観しつつ、様々な指標も含めて国際競争力の分析を行って現状を把握すると共に、今後どうしていけばよいか若干の考察をしてみたいと思います。

 経済指標単独での分析、意識調査単独での分析、特許出願件数単独での分析は書籍又はウェブの記事でなされていますが、これらを相互に関連付けた分析はなされていないようですのでチャレンジした次第です。

 以下、知的財産に関する指標(特許出願件数)を俯瞰しつつ、経済指標を含む各種の指標、及び意識調査の結果を確認しながら、国際的な視点で日本の現状を分析するとともに、今後の改善のヒントがないか検討していきます。

 本稿は、下記のように全部で3回に分けて連載したいと思います。

  • はじめに(本記事)

第1回

  • 1.特許出願件数の推移からみた国際競争力
  • 1-1.日本国内の特許出願件数の推移
  • 1-2.各国の国内特許出願件数の推移
  • 1-3.各国のPCT国際特許出願件数の推移

第2回

  • 2.各種の客観的指標の推移からみた国際競争力の現状
  • 2-1.AI(人工知能)への対応状況
  • 2-2.論文の発表件数の推移
  • 2-3.名目GDPの推移
  • 2-4.国民一人当たりの名目GDPの推移
  • 2-5.主要国の成長率の要因分解
  • 2-6.内部留保の推移
  • 2-7.実質賃金指数の推移

第3回

  • 3.個人の努力で改善可能な指標について(主観的指標)
  • 3-1.ランスタッド・ワークモニターの各国の従業者の意識調査(世界全域33か国)
  • 3-2.高等教育機関における30歳以上入学者割合の国際比較
  • 3-3.パーソル総合研究所の就業実態・成長意識調査(アジア太平洋地域(APAC)14か国)
  • 4.小括
  • 5.最後に